BtoBサブスクについて学ぶ
急速に拡大し続けるサブスクビジネス。ここでは、BtoB向けの注目のサブスクビジネスをご紹介するほか、サブスクビジネスへの参画を検討している方のために、サブスクリプションビジネスの特徴や市場規模、メリットやデメリットなどを解説します。
【基礎編】サブスクリプションビジネスを理解する
サブスクリプションサービスとは
サブスクリプションサービスとは、料金を支払うことで特定の商品やコンテンツなどを一定期間利用できるサービスのこと。「サブスクリプション」は英語の"Subscription(定期購読などの意)"が由来で、「サブスク」と省略されることもあります。
サブスクリプションサービスというと、「Netflix」などの月額制動画配信サービスを連想する人も多いのではないでしょうか。しかし、サブスクの歴史は意外に古く、その始まりは定期新聞サービスがスタートした17世紀のウィーンにまで遡るといわれています。
サブスクビジネスの特徴
サブスクビジネスは、継続的な収益をあげることを目的に運営する仕組みを作ってサービスを提供するビジネスモデルである「ストック型ビジネス」の1つ。
そんなサブスクビジネスには以下のような特徴があります。
ユーザーが継続して支払う料金を収入源とする
サブスクビジネスを行う事業者は、最初に提供する商品やコンテンツなどを決め、インフラを整えてからユーザーに対して定額サービスを提供します。ユーザーは会員登録をして毎月定額料金を支払いますが、これがサブスクビジネスの収入源となります。
料金は商品を購入するよりも低めに設定されており、最初は利益が費用を下回る傾向にあります。しかし、会員数が増えるとともに収益が積み上がり、一定のユーザー数に達した時点で利益が費用を上回るようになるのです。
このように継続的な売上から収益化するという形態は、サブスクビジネスの大きな特徴といえるでしょう。
商品やサービスではなく利用権を販売する
サブスクビジネスには、物やサービスではなく「利用する権利」を販売しているものもあります。
利用権には有効期限があり、新たに料金を支払えば次の期間もサービスの利用が可能に。こうした料金形態は、継続収益を前提としているサブスクビジネスの特徴をよく表しています。
ユーザーのニーズに合わせてサービス内容や料金を変更することも
サブスクリプションサービスを利用しているユーザーは、商品そのものではなく「好きなモノやコトをお得に利用できるサービス」に対して料金を支払っています。そのため、事業者はユーザーのニーズなどに合わせてサービス内容や料金を変更することもあります。
こうしたユーザー主導の販売形態も、サブスクビジネスの特徴の1つです。
サブスクビジネスの市場規模
サブスクリプションサービスには、大きく分けて消費者をエンドユーザーとするBtoCと、企業間で取引するBtoBの2種類があります。
消費者庁が2019年に発表した資料(三菱UFJリサーチ&コンサルティングによるもの)を見ると、サブスクビジネスの市場規模について2019年12月9日時点では「BtoCだけで2023年には約8,600億円に到達する」と予想されていましたが、その成長スピードは予想を大きく超え、2021年には9,600億円を突破しています。
また、NTTコミュニケーションズは独自に算出したデータで「BtoCのサブスクビジネス市場は2024年には1.2兆円にまで広がり、BtoBと合わせると50兆円に達する」と予想しています。
つまり、BtoBサブスクビジネスは、BtoCの約40倍もの市場規模を潜在的に持っていると考えられるのです。
サブスクビジネスのメリット
事業者側が得られるサブスクビジネスのメリットとして、以下の3つが挙げられます。
安定した収入源になりやすい
商品やサービスを販売して利益を得る従来のビジネスモデルでは、購入者の数も購入金額も予想することが難しい傾向にありました。しかし、ユーザーが毎月決められた料金を支払うサブスクビジネスは、その月のユーザー数から売上を容易に予想可能。安定した収益の確保は、安定した経営につながります。
新規参入しやすい
サブスクビジネスは、動画配信や音楽配信にとどまらず、衣料・飲食・家具・家電など幅広い分野に導入されています。
ある製造会社では、IoT機能を搭載した航空エンジンのサブスクリプションサービスを展開中。従来は航空機メーカーに航空機エンジンを販売していましたが、IoTを導入することによって航空機メーカーを間に入れず直接エアラインが顧客になったうえ、エンジンの状態をリアルタイムでモニタリングすることが可能となりました。その結果、メンテナンスが必要な箇所をいち早く見つけて対応し、燃料費を抑えた飛行ルートを提案できるようになったのです。サービスを利用するエアライン側にとっては、エンジンを稼働させた分だけ料金を支払うことで、航空機エンジンの状態を最適に保てるだけでなく、燃料費の節減や最適な飛行ルートの選択ができるメリットが生まれました。
サブスクは業態を問わず参入できる可能性を秘めているため、新規参入を検討している事業者にとってトライしやすいビジネスなのです。
新規ユーザーを獲得しやすい
ユーザーにとってサブスクビジネスには、「購入するよりも安い」「使い放題」「支払額が決まっている」というふうに、お得感があります。お得感に加えて料金も低めに設定されていることから、新規にユーザーを獲得しやすいビジネスモデルと考えられます。
サブスクビジネスのデメリット
メリットが多く見えるサブスクビジネスですが、事業者にとって以下のようなデメリットもあります。
利益が出るまでに時間がかかる
サブスクビジネスが継続的な収益を上げるようになるには、一定数のユーザーを確保する必要があります。
例えば、目標とする売上を達成するにはユーザーを最低1,000人集める必要があると仮定しましょう。毎月100人ずつユーザーが増えるとすると、1,000人集めるのにかかる時間はおよそ10か月。つまり、それまでは赤字になってしまうことが予想できますし、手っ取り早く会員を獲得しようとすれば広告費などのコストがかかります。
一定のユーザー数を確保し続けることが難しい
「好きな時に解約できる」という利用者にとってのメリットは、事業者にとってはデメリット。ユーザーが離れてしまうとその分売上が下がってしまいます。
提供するサービスに魅力が感じられなければユーザーを増やすこともつなぎとめることも難しいため、事業者はユーザーを確保し続けるためにサービス内容を定期的に変えたり新たなサービスを追加したりするほか、宣伝活動に力を入れるなどの工夫が必要です。
価格競争に巻き込まれる可能性が高い
参入したサブスクビジネスの分野で似たようなサービスを提供する企業が現れた場合、価格競争に巻き込まれる可能性が高まります。
価格を下げずともユーザーに乗り換えられないようにするには、競合と比べて費用対効果を高めたり、他社にはない独自の価値を提供する必要があります。
サブスクビジネスと他のビジネスモデルを比較
サブスクビジネスは定額制やリカーリングといったビジネスモデルと混同されることもありますが、どのような相違点があるのでしょうか。サブスクビジネスと他のビジネスモデルとの違いを表にまとめました。
ビジネスモデル | 概要 | サブスクビジネスとの違い |
---|---|---|
買い切り | 商品を販売し、 その対価を得るビジネスモデル |
購入した時点でユーザーが所有者になるという点で異なる |
レンタル | レンタカーなど特定の商品を 一定期間貸し出し、その対価を得るビジネスモデル |
その商品を借りることに対して料金を支払うという点で異なる |
リカーリング | 電気料金などの継続的に利用するサービスを提供し、その対価を得るビジネスモデル | 一定期間内に使用した分だけ料金を支払うという点で異なる |
シェアリングエコノミー | 家事代行サービスなど個人のスキル(遊休資産)を必要としている人に貸し出し、その対価を得るビジネスモデル | その都度の取引が多いという点で異なる |
定額制&月額制 | 特定の商品やサービスを提供する代わりに定額または月額料金で支払いを受けるビジネスモデル | 同一の商品やサービスに対して、設定されている金額を支払うという点で異なる |
【応用編】サブスクビジネスを始める前に知っておきたいこと
サブスクビジネスの成功例
サブスクリプションビジネスを成功させるには、まず自社が強みを持つ領域・商材で参入することが大前提。そのサービスと親和性の高いユーザーに利用してもらえるよう、広告展開や集客戦略を展開することから始めましょう。
サブスクで継続収入を得るためには、ユーザーの満足度を高め、維持し続ける必要があります。選択肢の追加や品質の向上など、反応を見ながらサービスをブラッシュアップし続けてください。満足度が安定してきたら、ワンランク上のプラン提供や同ジャンルの別商材をサブスクで提供し、アップセルを狙うのも売上拡大の一手です。
このような成功パターンに基づいたサブスクビジネスの成功例を2例ご紹介しましょう。
サブスクビジネス成功例:食品製造会社編
コーヒーなどのドリンク類をメインにサービスを展開している食品製造会社Aは、コーヒーマシーンを無料で貸し出し、定期的に好みのカプセルを届けるサブスクビジネスを始めました。
対象は一般家庭から法人までと幅広く、サブスクリプション事業だけでも100億円以上を売り上げているとのことです。
サブスクビジネス成功例:IT会社編
主にソフトウェアの開発を手がけているあるIT会社Bは、BtoB向けにクラウド会計ソフトのサブスクリプションサービスを開始。
月々千円単位で利用できる手頃さが個人事業主や法人に受け入れられてユーザー数を伸ばし、2021年には有料課金ユーザーが31万事業所に達したということです。
サブスクビジネスの失敗例
成功するサブスクビジネスがある一方で、失敗し撤退した事業者も少なくありません。ここでは、失敗したサブスクビジネスを2例ご紹介します。
サブスクビジネス失敗例:衣料品メーカー編
衣料品メーカーCは、毎月スーツをレンタルするサービスを始めました。「自分でスーツを選ぶ必要がない」ということでスタート時は好調だったようですが、約半年後にサービスは終了してしまいました。
その原因としては、
- 想定していたターゲットと、実際に購入したターゲットが著しく異なった
- ユーザーのニーズに応えられるほどのバリエーションがなかった
といったことが考えられます。
サブスクビジネス失敗例:テレビ会社編
テレビ会社Dは、毎月好きなチャンネルを見放題できるサブスクリプションサービスを展開していました。利用者を増やそうと割引サービスなどを実施して新規顧客の獲得に力を入れたものの、ユーザー数が増えずに赤字に大きく転落してしまいます。
新規顧客を獲得しようとするあまり既存ユーザーに対して満足の行くサービスを提供できなかったことと、安さを理由に契約したユーザーの解約率が高かったことなどが原因とされています。
こんなサービスはサブスク向き
成功例と失敗例から分かるようにサブスクビジネスにも向き・不向きがあり、サブスクに向く商材には以下のような特徴があります。
- 身近に利用するもの...利用頻度が高く、お得感が生まれやすい
- 継続して使うもの...その都度購入する手間が省け、利便性を感じやすい
- 種類を増やしやすいもの...次々と新しいものが登場するため飽きにくい
例えば、コピーやプリントアウトは特にオフィスワークで日々利用するものですが、レンタルの場合は1枚1枚カウントされ、使用頻度が多ければ多いほど費用が嵩みます。ところが、サブスクなら定額で使い放題(月間の印刷枚数に上限がある場合アリ)。1ヶ月ごとの更新制なので、新型の複合機にスイッチするのもスムーズです。 つまり、複合機のサブスクは上記に挙げた「サブスクビジネスに向く商材の特徴とマッチしているのです。
一方、利用頻度が低くバラエティを増やしにくい商品を取り扱ったサービスは、サブスクに不向きで失敗しやすいといえます。サブスクビジネスで成功するには、サブスク向きのサービスを吟味するようにしましょう。
サブスクビジネスの将来性
前出した消費者庁の資料によれば、これまでにサブスクリプションサービスを利用したことがあると答えた人は、調査対象全体のうち58%。年齢別に見ると20代と30代が多く、若い世代になるほど受け入れられているサービスであることが分かります。
次の世代もサブスクリプションサービスに対する抵抗感は低いと考えられることから、今後もサブスクビジネスに参入する企業は増加し、ますます市場は拡大していくでしょう。
ただし、市場の伸びはさまざまな要因によって影響を受ける可能性があるため、予想通りのペースで成長するとは限りません。例えばインフレによって物価が高騰し、サブスクリプションサービスを継続させる余裕がなくなるなどして解約する人が増えた場合、市場はマイナスに転じる可能性があります。
とはいえ、例えばオフィス向けの家具のサブスクがリモートワークの拡大によって需要低下しても、今度はそのリモートワークのためのオンラインミーティングやチャットサービスが台頭する...といったように、既存のサブスクが売れなくなっても時代のニーズに合わせてサブスク化できるサービスはあり続けると想定されます。
サブスクビジネスの課題
サブスクビジネスを成功させるための主な課題は、以下の3点です。
事業収益の見える化
サブスクビジネスをスタートする際には多くの企業がKPIを設定するものですが、KPI管理は煩雑になりがち。日々KPI算出のための数値をExcelに入力したり分析のためにグラフ化したりしていればその分工数が掛かり続けます。
また、入会者を増やして退会率を下げ、継続的な収益を得続けるには「ユーザーが会員登録してから解約までのプロセス」を把握する必要がありますが、会員数が増えれば増えるほどその分析も煩雑になってしまいます。
KPIと現実のギャップを把握し、改善策を練ってPDCAを回すには、こうした煩雑な管理業務を自動化・見える化するのが得策です。
スピーディでミスのないユーザー対応
例えばサービスを申し込むまでに時間がかかったり料金を間違えて徴収したりするようなことが続けば、いくら集客したとしてもユーザーは定着しないでしょう。
ユーザーに不快な思いをさせることなくサービスを提供し続けるには、システムを導入し効率良く管理することが不可欠です。
どこを効率化したいかは企業によって異なるため、自社にあったシステムを吟味するようにしましょう。
ユーザーの解約率を下げる
サブスクビジネスで重要なのは、一定数のユーザーと、継続的な収入源を確保すること。
ユーザーからサービスを長期的に利用してもらうには、ユーザーのニーズを把握し、それに見合ったサービスを提供し続けることが求められます。
ユーザーのニーズを把握するには、以下のような工程が必要。
- 収集した大量のデータを管理する
- ユーザーの利用頻度などからデータを収集し、傾向を分析する
- 課題解決のため部署を超えた話し合いを持つ
現状の把握やデータの分析を効率よく行い、それを踏まえて新しい発想を得るためには、サブスクの収益や会員動向を把握できるシステムの導入・活用が鍵となるでしょう。
【実践編】サブスクビジネスの始め方
サブスクビジネス開始前に準備すべきこと
サブスクビジネスを始める前に準備すべきことは、主に以下の3点です。
- 提供するサービス内容を考える
- サービスの提供方法を決める
- サブスクを運営するためのシステムを導入する
1.と2.は、企業内で話し合うことでまとまりそうです。
3.については、「どのようにシステムを導入するか」も検討する必要があります。
システムの導入方法には、大きく分けて「自社で開発する」「既存のサービスを利用する」
の2種類があります。
自社で開発する場合は自由にカスタマイズできる反面、開発までに時間とコストがかかるのが難点。一方、既存のサービスを利用する場合は自由度が劣るものの、メーカーのサポートを受けながら導入までが比較的スムーズにできるという特徴があります。
予算や準備にかかる時間、システム開発に必要な人材の有無といった視点を加味してどちらが良いか検討してみましょう。
サブスクビジネスの課題をスタート時点で回避するには
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