2025年04月30日 公開
ARR Ranking Report 2025.04〜成長続くSaaS市場、ランキングから見えた3つの変化とは〜

Next SaaS Media Primaryが2025年4月のSaaS上場企業のARRをランキング形式で公開しました。
今回の調査では、各社のIR情報や決算データをもとに、売上の中でもストック性の高いARRを基準にランク付けが行われました。
トップは403億円超の「ラクス」──300億円超は6社に
Next SaaS Media Primaryが2025年4月に公表された決算説明資料を反映させた最新のARRランキングを公表しました。結果は以下の通りとなりました。
ランキング1位となったのは、クラウド型経費精算や請求管理システムで知られるラクスで、ARRは403.2億円(前年比+24.1%)に達しました。前年に続いて堅調な成長を見せつつ、TOP3との競争が激化しています。
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1位:ラクス(403.2億円 / +24.1%)
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2位:Sansan(394.2億円 / +26.8%)
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3位:Appier Group(363.0億円 / +27.0%)
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4位:マネーフォワード(321.3億円 / +26.0%)
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5位:サイボウズ(313.9億円 / +30.7%)
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6位:フリー(300.0億円 / +29.1%)
ARRが300億円を超える企業は、前年の5社から6社に増加し、いずれも20%以上の成長率を記録しています。市場の成長性に加え、SaaSプロダクトの継続利用価値が評価されていることがうかがえます。
注目すべきは「成長率上位の中堅・新興企業」 AI、マーケティング、業界特化SaaSに勢い
2025年のランキングでは、ARR規模では中堅・新興に分類される企業の中から、30%以上のYoY成長率を記録した企業が多数登場しています。特に目立ったのは以下の10社です。
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エクサウィザーズ(YoY +222.2%、ARR 13.9億円)
AIを活用したプロダクトで社会課題の解決に取り組む注目企業。急成長を記録。 -
ジーニー(+60.8%、32.4億円)
広告・マーケティング領域に強みを持ち、CRMと連動するSaaSで差別化。 -
トヨクモ(+49.0%、40.6億円)
災害時情報共有ツールなど公共分野に強み。業務管理ソリューションも展開。 -
スマレジ(+48.6%、81.9億円)
POSレジを中心に小売・飲食業界向けSaaSを展開し、安定成長中。 -
Finatextホールディングス(+47.8%、42.1億円)
証券・保険領域を含む金融サービスでストック+従量課金モデルを確立。 -
メドレー(+45.0%、73.5億円)
医療現場の業務効率化を支援するプラットフォームを提供。 -
スタメン(+42.0%、24.7億円)
エンゲージメント領域のSaaS「TUNAG」で企業文化の定着支援を推進。 -
サイエンスアーツ(+35.2%、7.9億円)
現場向け音声コミュニケーションSaaSで独自の市場を開拓。 -
HENNGE(+35.1%、96.1億円)
ゼロトラスト型のセキュリティサービスでエンタープライズ需要に対応。 -
ファーストアカウンティング(+35.0%、18.0億円)
経理業務のAI自動化ツールを提供し、バックオフィスの効率化に貢献。
これらの企業に共通しているのは、特定業界に深く入り込み、業務特化型のSaaSを展開している点です。また、AIやデータ活用を前提としたプロダクト設計が成長を加速させていることもうかがえます。
ランキングから見えた3つの変化:カテゴリの細分化、"堅い"製品の台頭、市場の成熟
2025年のARRランキング上位30社の動向を分析すると、SaaS市場の進化と構造変化がより明確になってきました。特に注目すべきは、次の3つの傾向です。
1. 業界特化型SaaSの台頭:深掘りによる定着が進む
幅広い業界ニーズに応える汎用型SaaSから、特定の業務領域や業種に特化したプロダクトへのシフトが一層鮮明になっています。医療、建設、小売、労務、法律といった領域では、現場の実務に深く入り込み、業務そのものを変革するようなプロダクトがARRを着実に積み上げています。
2. "インフラ化"するB2Bプロダクトが堅調に成長
昨今のランキングでは、必ずしも話題性や革新性に富んでいない、"堅実"なサービスが、継続率の高さと導入定着の強さを武器に上位に食い込んできています。特に、セキュリティ、ID管理、人材マネジメント、社内ナレッジ共有といったカテゴリでは、「一度導入されたら手放せない」SaaSとしての地位を確立しつつあります。
3. 市場の新陳代謝よりも、既存企業の持続的成長が際立つ
新規参入企業の急浮上よりも、すでに数年前から認知されている中堅SaaS企業が、着実にARRを伸ばし続けていることが今年のランキングの特徴です。プロダクトの改善、クロスセル展開、既存顧客の深耕といった地道な取り組みが、成長の安定化と加速を生み出していると見られます。
これらの傾向からは、SaaS市場が「急成長のフェーズ」から「成熟と深化のフェーズ」へと移行しつつあることが読み取れます。もはやARRを伸ばすだけでは評価されず、その中身や持続性、そしてプロダクトがどれだけ"顧客業務の一部"になっているかが問われる時代に入っているのです。
まとめ:サビ研運営会社オプロもランクイン!戦略の多様化へ
上位企業の安定成長に加え、中堅〜新興企業のARR急成長が顕著となった2025年春のランキング。市場全体としては成熟に向かいつつも、カテゴリ特化やAI活用、プロダクト主導の拡張戦略といった新たな打ち手が、明確な成果として表れ始めています。
特に目立ったのは、業務領域に深く入り込み、特定市場に対して"使われ続ける"SaaSを提供する企業群の躍進です。たとえば、BtoBのサブスクリプション型ビジネスを展開する企業向けに、見積から請求・KPIまでを一貫して管理できる販売管理サービス「ソアスク」を提供するオプロも、本ランキングに名を連ねました。
今後は、「ARRの規模」だけでなく、「継続率の高さ」「LTVの最大化」「業務変革への寄与度」など、SaaSが本質的に提供する価値がよりシビアに問われるフェーズに入っていくでしょう。"便利なツール"を超えて、"事業の中核を担う存在"になれるかどうかが、次の成長を分ける鍵となりそうです。
(執筆:サビ研編集部)
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