BtoBサブスクビジネス実態調査2022 - 事業者アンケートから見る法人向けサブスクビジネスの課題と価値

ここ数年のサブスクリプションサービスは、「所有から共有へ」という時代の流れに乗り、様々な業種業態で一般的なビジネスモデルになってきています。この記事を読んでいる方の中には、これからサブスクビジネスのスタートを考えている事業者様はもちろん、既にサブスクビジネスを展開している事業者様も多いのではないでしょうか。

今回サブスクビジネス研究所では、サブスクリプションサービスを提供している事業者にその提供状況や課題、サブスクビジネスに感じる価値などについての実態調査を実施しました。

実際にBtoBサブスクを手掛ける事業者はどういったターゲットに向けてどのようなサービスを提供しているのか。事業立ち上げやサービスの提供開始後にどのようなことを課題に感じたのか。サブスクビジネスを行うことでどのようなメリットを感じたのかーー

本調査の結果が、サブスクリプションサービスを現在提供している事業者様、またはこれからサブスクビジネスを始める事業者様にとってヒントとなれば幸いです。

BtoBサブスクリプション型サービスの提供状況

サービス分類別ではITサービスが75%

Q1.提供しているサービスの分類を教えてください。

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提供しているサブスクビジネスの分類を尋ねた設問では、ITサービス(例:Office365、AWS、Salesforce、Sansanなど)が75%と圧倒的多数を占め、続いてコンテンツ(例:研修、福利厚生)が15%、モノ(例:ウォーターサーバー、観葉植物など)が11%という結果になりました。

新規、既存の割合は半々、近年は新規ビジネスが増加傾向

Q2.提供しているサブスクサービスは新規ビジネスですか?既存ビジネスからの移行ですか?

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「そのサブスクサービスは新規ビジネスですか、既存ビジネスからの移行ですか?」という設問については、答えが50%ずつに分かれる結果となりました。

2021年度に実施したサブスクビジネスにおける実態調査での回答結果も新規ビジネスが51%、既存ビジネスからの移行が49%となっており、ほぼ同様の結果となっています。

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サービスの提供期間別にその内訳をみてみると、提供開始1年以下の事業者は新規ビジネスが67〜68%と高い割合ですが、5年以上と長期にわたってサービスを提供している事業者は既存ビジネスからの移行が63%を占めています。コロナ禍の影響で劇的に環境が変化し異なる価値観が生まれる中、サブスクというビジネスモデルで新規事業を始める企業が多かったと考えられます。

サービス提供5年以上の企業が最多、35%

Q3.サービスを提供開始してどのくらい経ちますか?

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サービスの提供期間についての設問では、「5年以上」と回答した事業者が35%を占め、最多となりました。次いで「1年未満」が18%、「1年以上、2年未満」が15%となっています。

サービス分類に関わらず同様の傾向が見られ、5年以上と長期にわたってサブスクビジネスを提供している企業と、提供を開始してから2年未満の比較的最近サブスクビジネスに参入した企業に分かれているようです。

企業規模は関係なしが半数、コンテンツは25%が大企業をターゲットに

Q4.ターゲットにしている企業規模は?

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「ターゲットにしている企業規模は?」という設問については、「企業規模は問わない」が最多で51%となりました。サービス分類別に見ても概ね同じ傾向がみられますが、研修や福利厚生といったコンテンツを提供するサブスクサービスについては、大企業をターゲットとしたものが比較的多くなっています。

研修や福利厚生において継続的に費用が発生するサブスクサービスを利用するのは、企業としての体力があり、従業員育成に力を入れる余地がある大企業の方が適しているため、コンテンツのサブスクでは大企業をターゲットとする事業者が多いと予想されます。

サービス内容での差別化が7割、提供期間5年以上の場合はブランド力も

Q5競合サービスと差別化しているポイントは?

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「競合サービスと差別化しているポイントは?」という設問については、68%が「サービス内容」と回答し、次いで「価格」「ブランド力」が同率30%となりました。

複数回答可という条件の下、「サービス内容、価格」「サービス内容、ブランド力」という組み合わせの回答が多く見られ、多くの事業者が「差別化の条件としてサービス内容が欠かせない」と考えていることがよく分かる結果でした。

継続的にサービスを提供していくサブスクリプションビジネスの場合、サービス内容の充実化によって顧客満足度を向上させ、解約率を低減させることがビジネス成功のカギとなります。サブスクビジネスの特徴がよく表れた回答傾向だと言えるでしょう。

他には、既存ビジネスとのシナジー、サポート体制、付帯支援サービス、ハードとのパッケージングとノウハウ、導入構成の自由度といった回答も見られました。

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サービス提供期間別にみても、提供期間の長短に関わらず、各企業が差別化のポイントとしてサービス内容に注力している様子が分かります。

なお、5年以上サービスを提供している事業者については、5年未満の事業者よりも「ブランド力」のポイントが約20%高い傾向が見られます。ブランド力のある事業者が早い時期からサービスを提供していたか、もしくは長期にわたってサービスを提供する中で培った知名度を差別化のポイントにしている可能性が考えられます。

キャンペーン、ウェブ広告が契約増に効果あり

Q6契約を増やすためにどのような取り組みをしましたか?効果があった施策をお答えください。

subscription-survey2022_2all_9.png契約数を増やすのに有効だった施策として挙げられたのは、「キャンペーン」が39%、ウェブ広告が 25%です。

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サービス提供期間別に見てもキャンペーンとウェブ広告が有効だという結果に変わりはありませんが、提供期間2年以上の事業者ではおよそ半分が「キャンペーンが有効」と考えているようです。キャンペーンに一定の効果を認め、新規顧客獲得のために繰り返しキャンペーンを実施しているものと思われます。

他の回答としては、ダイレクト営業、Youtube・SNSなどのデジタルマーケティング等、リード獲得サイトの利用、無料セミナー、販売パートナーの開拓などといった施策も挙げられていました。

サブスクリプションサービスの提供における課題

企業によってばらつきがあるが、提供期間に応じて変化

Q7どのような指標を主に重要視していますか?

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サブスクビジネスを提供する際の指標として重視しているものは何か、という設問では、図の通りARR(年次経常収益)30%、 MRR(月次経常収益)25%、 Churn Rate(解約率)24%をはじめ、LTV(顧客生涯価値)、ARPU(ユーザー平均単価)、CAC(顧客獲得単価)と回答がバラつき、大きな偏りは見られませんでした。

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一方、サービスの提供期間別のクロス集計を見ると、提供期間に応じて数値に変化が見られました。提供期間2年未満の事業者についてはARR(年次経常収益)を重要指標とする数値が他の指標に比べて高いのに対し、提供期間2年以上の事業者では、MRR(月次計上収益)、Churn Rate(解約率)などの数値が上がり、5年以上の事業者では、MRR、ARR、Churn Rate、ARPU(ユーザー平均単価)がほぼ同じ30%前後となっています。


このことから、月々の積み上げや解約に関する情報など、ビジネスの成長度合いを把握できる指標が重要視されていること、さらにサービスの提供期間が長くなるにつれて、より多くの指標を用いて多様な観点から分析するようになっていることが分かります。
まずはARR(年次計上収益)に着目してビジネスを展開し、導入数が増えてきたら他の指標にも目を向けて顧客の定着化や利用継続を図る、という流れですね。

料金プランの策定、社内体制の整備が悩みの種

Q8.ビジネス立ち上げの際に苦労したことは?

  • 『料金プランの策定(商品単価のわりに利益確保が難しい)、社内体制の強化と機能強化等の計画策定、拡販施策への対応』
  • 『マネタイズ・回収シナリオの構築』
  • 『損益分岐点のシミュレーション』
  • 『売り切りとサブスク売りを並行した社内体制の整備』
  • 『サービスを提案する営業、営業支援の人材の意識変革と体制強化』
  • 『プロダクト開発、CS 体制の整備』
  • 『プロモーション』

「ビジネス立ち上げで苦労したことは?」という設問への回答は、主に3種類の方向性に分かれました。料金プランの策定、社内体制の整備、プロモーションの3つです。


料金プランの策定については、中小企業向けの価格設定のため単価の割に利益確保が難しい、社内での維持・運用にかかるコストの意識が低い、複数年契約のディスカウント設定が難しい、一括購入した場合との比較や損益分岐点の計算が難しかったなど、サブスクという新しいビジネスモデルであるがゆえに発生する課題が多く取り上げられました。


社内体制の整備としては、複数部署にまたがる事業のため調整が困難だった、人員確保のための社内理解を得るのが大変だった、営業の人材をどう立ち上げるかが課題だった、年配の方が多く、紙から電子への切り替えに反発があった、などといった意見が寄せられました。
こちらは社内に対する新規事業の啓蒙や周知といった部分で難しさを感じた人が多かったようです。


プロモーションについては、新規ビジネスであるため認知度が低く苦労している、マーケットの開拓が大変、などの意見が見られ、新規ビジネスのマーケティングの難しさが浮き彫りになりました。

セールスや導入後の管理に課題

Q9.提供開始後に苦労したこと、課題に感じていることは?

  • 『契約数が伸びない』
  • 『アップセル、クロスセルができない』
  • 『見積、請求のミス。契約更新が手間。レポート作成が複雑で大変』
  • 『サポート体制の構築が必要となるため、リソースの分配などに苦労した。』
  • 『提供社数が増えるにつれてメンテナンスが必要になり、新機能開発に注力しづらい。』
  • 『提供開始時に契約優先で個別対応を許容した結果、導入社数増加後に管理工数がかかっている。』

提供開始後に苦労したこととして主に挙げられたのは、売上が伸びないというセールス面の課題、請求や契約更新の手間といった販売管理面の課題、顧客数が増加するにつれて負担が大きくなるカスタマーサポート面の課題などです。


売上に関する課題はどのような事業でも発生するかと思いますが、契約や顧客数が増え続けるサブスクビジネスでは、契約管理やサポートといったサービス導入後の業務負担が増加し、対応に苦労する企業が多いようです。あらかじめサブスクサービス提供開始後の管理体制やサポート体制の充実化なども含めて対応を準備しておく必要がありそうです。

自前での管理(EXCEL等での管理、自社開発ツール)が65%で大多数

Q10.請求や契約の管理はどうしていますか?

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「提供開始後に苦労したこと、課題に感じていることは?」という設問でも請求や契約の管理について苦労しているという回答がありましたが、こちらの「請求や契約の管理はどうしていますか」という設問では、「自社開発ツールで管理している」と答えた事業者が39%、「ExcelやAccessで管理している」と答えた事業者が26%、既存の販売管理パッケージで管理している」が22%となりました。

自社開発ツールとExcel・Access管理を合わせると65%となり、多くの企業が自前のツールを用いて請求管理や契約管理を実施していることが分かります。

逆に既存の販売管理パッケージやサブスク専用の管理パッケージで業務を行なっている人は全体の30%となり、サブスクのビジネスモデルに適した管理ツールの普及率はまだそれほど高くありませんでした。

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ちなみにサービス提供期間別のクロス集計を見てみると、提供期間1年以下の事業者では「ExcelやAccessで管理している」が 40%近くを占めるのに対し、2年以上の事業者では「自社開発ツールで管理している」が約50%と高い割合になっています。

事業開始直後はExcelやAccessといったツールで簡易的にデータを保存し、ある程度顧客数が増えて顧客データを活用する段階になってきたら自社開発ツールに移行する、という流れをとっていると考えられます。
その移行のタイミングが提供開始後1〜2年の間、ということですね。

サブスクビジネスに感じる価値

継続的な売上と深い顧客理解がサブスクの魅力

Q11.サブスクリプションのビジネスモデルにどのような価値を感じていますか?

「サブスクリプションのビジネスモデルにどのような価値を感じていますか?」という設問については、「売上が継続的に積み上がる」という答えが最多で、その他には下記のような回答が寄せられました。

  • 『売上が継続して積み上がり、競合他社へ流れにくい点
  • 『軌道に乗れば安定した売上が確保でき、新製品開発にリソースがまわせる。』
  • 『初期導入(販売)コストを下げて販売できる。』
  • 『低価格でサービス提供できる』
  • 『フィードバックを得て、更なるサービス向上に転換しやすい』
  • 『顧客関係が継続できるため、連鎖案件が見込める』

事業者視点での最大のメリットは安定した売上を見込めるという財務的なものですが、継続的に顧客の利用状況を把握できることにより、サービスの向上や新規顧客の獲得に繋がりやすいというメリットを感じる事業者も少なくありません。

一定の安定した売上を確保しつつ、顧客からのフィードバックをサービス向上に活かしたり、顧客関係を維持できたりといった点がサブスクビジネスの魅力、という訳ですね。

収益安定化だけでなく、サービス品質・バックオフィス・カスタマーサクセスにも波及効果が

Q12.サブスクビジネスをやってよかったことを教えてください。

「サブスクビジネスをやってよかったこと」という設問については、下記のような回答が挙げられました。

  • 『収益が安定もしくは向上した』
  • 『ベースとしての売り上げが見えるので、計画が立てやすい』
  • 『サブスクビジネスから別の案件獲得につながったことがある』
  • 『管理の仕組みが構築できた』
  • 『どれだけサービスが利用されているかが可視化され、収益向上努力にダイレクトにつながっていることが実感できた』
  • 『顧客の声をサービスに反映しやすく顧客の意見に耳を傾けることができる。』
  • 『人材育成が成功した。サービス品質が向上した。』

最も多かったのは、収益の安定や向上といった売上に関するメリット、ついで顧客との関係性強化、サービス品質の向上、管理方法の確立、営業力の向上、人材育成の成功といった内容が目立ちます。

サブスクビジネス最大の魅力である収益の安定化を感じている人が多いのはもちろんですが、収益が安定したことで、これまでと同じリソースにも関わらずサービス品質向上に注力できるようになったり、管理の仕組み構築や人材の成長といった内部的メリットを得られたり、カスタマーサクセスを実現して顧客とWin-Winな関係が築けたりと、その波及効果が広範囲にわたって現れているのが印象的です。

中には、「新しい事に挑戦する企業、業種だと世間に認識してもらえた」など、新しいビジネスモデルに挑戦することで企業全体のブランド力向上、イメージアップを実現したという回答も見られました。

おわりに

ここまで、事業者におけるサブスクリプションサービスの提供状況および課題、サブスクリプションサービスに感じる価値観についてお伝えしてきましたが、いかがでしたか。

サブスクビジネスは、新規顧客を獲得し続けなければならない売り切り型のビジネスモデルよりも安定した収益を継続して得ることができ、事業者側にとって展開しやすいビジネスモデルだと言えるでしょう。
長期的にサービスを提供することで顧客との関係を深め、フィードバックを反映してサービスの品質向上に生かすなど、カスタマーサクセスを実現しやすいビジネスモデルでもあります。

しかし一方で、顧客数増加に伴う請求管理や契約更新管理、カスタマーサポートに関する課題に対応しつつ、事業成長に向けた取り組みも継続していかなければなりません。
このようなサブスクビジネスに事業者として関わり、競合に勝っていくためには、限られたリソースを生産性の高い業務に振り分け、新規顧客獲得に注力していくことが重要です。

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調査概要

調査名  :BtoB サブスクビジネス実態調査 2022
調査方法 :オンライン上でのアンケート
調査期間 :2022 年 1 月 5 日~ 16 日
調査対象 :法人向けサブスクリプションサービスを提供する国内企業に所属している個人
業種割合 :円グラフ参照
有効回答数:272 名
調査実施 :株式会社オプロ

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調査データのご利用に関して

本記事における著作権は、株式会社オプロに帰属します。
本記事の引用・転載については、「出典:『BtoB サブスクビジネス実態調査 2022』サブスクビジネス研究所(2022年 1 月調査)」と明記してご利用いただくようお願いいたします。

BtoBサブスクビジネス実態調査2024

BtoBサブスクビジネス実態調査2024

法人向けサブスクリプションサービスを提供している事業者に実態調査を実施しました。
その結果、モノのサブスクの成長、既存ビジネスからの転換、上場企業の差別化ポイントといった、具体性に富んだ様々なインサイトが得られました。

この記事のライター
サビ研編集部 オプロボット
サビ研編集部 オプロボット

サブスクリプションビジネス研究のため、サブスクの情報だけを発信し続けます。

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サビ研編集部 オプロボット
サビ研編集部 オプロボット

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