営業の未来を"会話"から変える──amptalkが描く新しいセールスイネーブルメントのかたち

「人と人が向き合う時間を最大化する」をミッションに、営業組織のレベルアップを支援するamptalk(アンプトーク)。AIを活用した電話・商談解析ツールをはじめ、日々の商談データの可視化・活用によってセールスイネーブルメントの実現を支援しています。

2020年に設立し、国内SaaS市場における営業DXの潮流を牽引してきた同社は、営業の現場に眠る「暗黙知」をデータ化し、属人的な商談を組織全体の資産へと昇華する取り組みを進めています。さらに近年では、AI技術の急速な進化を背景に、商談解析にとどまらず、AIロールプレイングの提供などセールスイネーブルメントの枠組み全体を包括するサービス群の開発にも注力しています。

今回は、amptalkの代表取締役社長 猪瀬竜馬氏に、セールスイネーブルメントとの出会いや起業に至るまでの思考の変遷、そしてAIを活用した今後の展望について伺いました。

※本インタビューは2025年7月に実施されたものです。

セールスイネーブルメントとの出会い

  
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吉田

起業された背景について伺いたいのですが、まずはご経歴から教えていただけますか。

 
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猪瀬氏

もともとは大手化学メーカーに勤めていまして、そこでアメリカに赴任したことが大きな転機になりました。現地でセールスイネーブルメントの仕事を担当しました。当時はタブレットに営業資料を入れて使えるようにするコンテンツマネジメントシステムを導入しました。

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吉田

海外でイネーブルメントの仕組みを推進する業務というのは珍しいケースですよね。

 
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猪瀬氏

はい。ただ、実際に導入してみると、現場の営業は「紙のほうがいい」と言って使われないことが多かったです。営業現場の感覚からすれば、それも理解できる部分もありました。何とか使ってもらおうと、コンサルタントや専門家に相談しました。すると興味深い資料に出会いました。そこには「こうしたツールを導入した会社の99%は失敗していて、その多くはPDFをそのまま突っ込んだだけの会社だ」ということが書かれていました。

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吉田

なるほど、ただPDFでの電子化では意味がないと。

 
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猪瀬氏

はい。逆に成功した会社は「デジタルでしかできないこと」をやっていました。例えば、画面上で触れて操作できる、動画が動くといった要素を組み込むことで営業のエンゲージメントが上がり実際に使われるようになっていた。
私もそこに気づき、予算を取ってデジタルならではなコンテンツを作って載せてみました。すると現場が一気に使い始め売上にも直結して、導入から3か月くらいで成果が出ました。

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吉田

やはり、現場の営業が使うかどうかが大きな分かれ目なのですね。

 
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猪瀬氏

その通りです。様々な要素が絡んでいますが、ツールの導入で訪問機会が増えるなど、営業活動が前に進んだ実感を得られたのは大きかったです。この経験が、セールスイネーブルメントをもっと深めたい、営業を支援する仕組みを作りたい、という思いにつながっていきました。

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「営業を科学する」への探求心と起業のきっかけ

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吉田

セールスイネーブルメントの経験を通じて成果を出されたとのことですが、そこから起業を考えたきっかけは何だったのでしょうか。

 
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猪瀬氏

当時からずっと考えていたのが、「いい営業と悪い営業の差って一体何か?」ということです。資料を駆使しても成果が出る営業もいれば、そうでない人もいる。私自身は営業で資料をあまり使わないタイプでしたし、資料そのものが答えではないと感じていました。
私が辿り着いた結論は「会話」でした。
営業が1時間、あるいは10分でも30分でも、商談の中で何をどう話すか。それが最も重要だと確信しました。だからこそ、資料よりも会話にフォーカスした取り組みをしたいと思いました。

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吉田

そこが、今のamptalkの方向性にもつながっているわけですね。

 
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猪瀬氏

2017年にアメリカに行ったとき、すでにZoomが当たり前に使われていて、日本にはまだほとんど浸透していませんでしたが、オンラインで会話を記録・共有する文化がありました。
日本に帰国してからも日本にはまだほとんど浸透していませんでしたが、「この流れは必ず来る」と感じていました。そして、営業の会話をもっと科学的に捉え、仕組みにできるのではないか――そう考えて、起業を決意しました。

練習用ツールから本番商談の録音へ──製品進化の過程

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吉田

起業当初は、amptalkはどのようなプロダクトだったのでしょうか。

 
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猪瀬氏

最初にリリースしたのは、営業の練習用ツールでした。例えば「ソアスクって高いですよね?」とお客様から言われたとき、営業がどう答えるか。それを一人で話して録音し、周囲の人がレビューしてスコアリングする、そんなサービスです。アメリカではすでに同じような製品があり、日本でもきっと需要があると思っていました。

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吉田

なるほど、まずは営業の"ロープレ"に着目したのですね。

 
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猪瀬氏

はい。ところが実際に使ってもらうと、「練習と本番は違う」という声が多く、なかなか定着しませんでした。営業の現場からすると、本番の緊張感や会話の流れはロープレだけでは再現できません。

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吉田

そこで方向転換をされた、と。

 
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猪瀬氏

そうです。2020年にコロナ禍が訪れて、商談の多くがオンラインに移行しました。Zoomでの打ち合わせが当たり前になり、「それなら本番の商談を録音できるようにしよう」と考えたのです。練習用の延長ではなく、実際の商談の会話を録って、分析できる世界にシフトしました。

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吉田

確かに、Zoomでの商談が増えたことで一気に現実味が出たわけですね。

 
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猪瀬氏

はい。そこからZoomとの連携機能を搭載し、さらにSalesforceにも自動的にデータを取り込めるようにしました。練習ツールのアイデアを土台にしながら、本番商談の録音・活用という新しい価値を作り出しました。

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開発の裏側──音声技術との出会い

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吉田

本番商談を録音する仕組みを作るにあたって、技術面でもさまざまな課題があったと思います。

 
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猪瀬氏

はい。本番商談を録音するとなると、ただ録るだけではなく正確に書き起こす音声認識の技術が必要になります。最初はAmazonやGoogleの音声認識APIを使おうと思いましたが精度が悪いしコストも高い状況でした。
結果的に「ゼロから作ろう」と決断しました。日本の音声研究をしている大学の教授にメールを送ったり、知り合いを辿って紹介してもらったりして、ようやく信頼できる音声エンジニアとつながり形にできました。

Salesforce連携の先駆者としての挑戦

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吉田

御社はSalesforce連携がかなり早い段階から実装されていました。
そこにはどんな意図があったのでしょうか。

 
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猪瀬氏

私が営業だった頃に嫌いだったことがひとつあります。それはSalesforceに入力することを上司に指摘されること。だからこそ、この状況を解消できる仕組みを作りたかったのです。

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吉田

なるほど、営業時代の"本音"がプロダクトの原点なのですね。

 
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猪瀬氏

営業の現場にいると、CRMへの入力はどうしても後回しになりがちです。でも、管理側に回ると「なぜデータが入っていないのか」とイライラする自分がいる。つまり、両方の立場を経験したことで、「現場が無理なく入力でき、管理側も欲しいデータが得られる」仕組みが必要だと強く感じたのです。
Zoomで録った商談データがそのままSalesforceに入る世界を作ることで、営業が"入力作業"に費やす時間を劇的に減らせます。だからこそ、立ち上げの段階から最優先でSalesforce連携を進めました。

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吉田

営業経験のあるCEOだからこそ、現場目線での意思決定ができた訳ですね。

 
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猪瀬氏

自分で営業をやっていたからこそ「この機能があったら本当に助かる」という感覚が分かかります。なので今も、「Salesforceへの入力を徹底的に楽にする」ことを開発の重要なテーマに据えています。

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練習と本番、AIで広がる営業イネーブルメントの未来

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吉田

最初は練習用ツールからスタートし、今では本番商談の録音・活用にシフトされたわけですが、最近はAIの活用も進められていますよね。

 
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猪瀬氏

はい。もともと最初に作った練習用ツールは一度撤退しています。ただ今は、AIが当時できなかったことを実現できる時代になってきました。

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吉田

具体的には、どういったことが可能になったんでしょうか。

 
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猪瀬氏

例えば、お客様から「ソアスクって高いですよね」と言われたときに、どう返すかをAIと"会話形式"で練習できます。これまでは練習しても本番に活かしにくい部分がありましたが、AIがキャッチボール相手になってくれることで、実際の商談に近い感覚で対応力を鍛えられるようになりました。

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吉田

なるほど、練習の精度自体がAIで上がっているわけですね。

 
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猪瀬氏

はい。そして、本番商談の録音・分析と、AIを活用した練習、この"本番と練習の両輪"を組み合わせることで、営業のイネーブルメントをより深く支援できるようになったと感じています。AIが単なる議事録作成にとどまらず、営業の行動そのものを変えるためのパートナーになりつつあります。

amptalkが描く今後のビジョン

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吉田

ここまで製品の進化やAIの活用についてお話しいただきましたが、amptalkとしてこれから目指していきたい方向性はどのようなものでしょうか。

 
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猪瀬氏

まず一番大きいのは、Salesforceへの入力をいかに楽にできるかという部分です。今の営業現場では、1日の商談をまとめてSalesforceに記録しようとすると30分から1時間はかかってしまう。でも、それを5分で終わらせられたらどうでしょう。営業は本来の仕事にもっと集中できるし、管理側も正確なデータがすぐに手に入ります。

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吉田

確かに、それだけでも現場はかなり助かりますね。

 
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猪瀬氏

はい。そして、その入力を効率化するだけではなく、"練習"と"本番"の両輪をどう発展させていくかが次の挑戦です。本番商談を記録し、AIが分析して学びを抽出する。そして、その学びをもとに営業がAIと一緒に練習できるようにする。こうすることで、営業のスキルアップを自然な流れで支援できます。

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吉田

単なる便利なツールという枠を超えて、営業の文化や行動そのものを変えていくイメージですね。

 
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猪瀬氏

そうです。パブリックなAIではできない"行動変容のデザイン"にこそ、私たちの価値があると考えています。amptalkはプロダクトだけでなく、人的な支援も組み合わせながら、営業組織が成長していくための基盤になっていきたい。まだ道半ばですが、そこに本気で取り組んでいこうと思っています。

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