クラウド・セキュリティ市場シェアNo.1!選ばれる秘訣――HENNGE社長が語る開発秘話とSaaSの未来

"先駆者に聞く"では、サブスクリプションモデルのビジネス(以下、サブスクビジネス)に携わる人に、サービスにおける運営の秘訣や大切にしていることなどを伺い、サブスクビジネスを成功させるヒントを掴むためのコンテンツをお届けします。

今回お話を伺ったは、テクノロジーにおける理想と現実のギャップを埋め、橋渡し役としてお客さまに新しい価値を提供し続けているHENNGE株式会社。提供サービスの中でも、さまざまなクラウドサービスに対して横断的かつセキュアなアクセスとシングルサインオン機能などを提供するSaaS認証基盤「HENNGE One」は、クラウド・セキュリティ分野で市場シェアNo.1を達成しています。

そこで今回は、HENNGE株式会社 代表取締役社長 CTOの小椋一宏氏に、起業の経緯や「HENNGE One」の開発秘話、今後歩むべき方向性などについて伺いました。

※本インタビューは2022年10月に実施されたものです。

大学生時代にアルバイト先で感じた起業チャンス 

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里見

小椋社長とは結構昔に知り合って、どちらかというとプライベートに近いところで何度かお会いしていましたが、当時のHDEからHENNGEへと商号を変え、さらにIPOでより一層急成長されました。
本日はそうした今までの流れや苦労された点、クラウドビジネスに関する考え方などをお伺いできればと思っております。
それでは早速ですが、小椋社長のご経歴をお聞かせいただけますか? 

 
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小椋社長 

私は幼い頃からパソコン少年で、中学生まではオタクとして過ごしました(笑) しかし高校に入学してからは「イメージを変えなければ」と"脱パソコン"を決意し、バンド活動や学園祭の委員活動などを通じて青春を謳歌しました。
その後、1年間の浪人中に秋葉原の電気街へ立ち寄った時、自分が離れていた3年間のうちにパソコンが大きく進化していたことに衝撃を受けたのです。一橋大学経済学部に入学してからはまたコンピュータと向き合う生活に戻り、大学3年生の時にHDE(ホライズン・デジタル・エンタープライズ)を起業しました。 

 

起業のきっかけは、アルバイト先でネットワーク接続を任されたことですね。ネットワーク機器販売業者との打ち合わせに参加するうちに、「業者といっても実はそんなに詳しくないかも?」と感じたのです。当時はちょうどインターネットが普及し始めていた時期で、業者といえどもまだノウハウが蓄積されていない状況でした。
スタート地点があまり変わらないのなら、「学生だけの会社を作れば、逆に柔軟性を武器に戦える余地が見出せるのではないか」と考えたわけです。 

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里見

時代の流れを読んだ見事な判断力です。
起業するにあたって気負いのようなものはありましたか?

 
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小椋社長 

当時はまだ学生でもともと給料がない生活だったので、そうした意味では気楽でした。売上が0円でも問題ないですし、失うものがなにもないですから(笑) 

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東日本大震災以降にクラウドベースの事業が本格化

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里見

こうした小椋社長の発想力や行動力が、現在の躍進につながっていますね。
その中でも御社の代表的なサービスとなっているクラウドセキュリティサービス「HENNGE One」、リリース当時の名称は「HDE One」でしたが、その開発秘話についてお聞かせいただけますか?

 
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小椋社長 

メールのアーカイブシステムをオンプレミスで提供していた頃、自分たちが一番歯痒いと感じたのが、お客さまにトータルなソリューションを提供できていなかったことです。絶対にハードウェアやネットワークが必要ですし、機能追加のためバージョンアップをするにもデータセンターの入館手続きを取得したり、変更点に関する手順書を作成・提出したりと、お客さまに対する"届けづらさ"を痛感していました。
また、なるべく少ないサーバ台数で動きを良くするため、可用性が低下気味になってしまうのも課題でしたね。 

 

そうした中、2010年頃にソフトウェアをサービスとして提供できるIaaSのような仕組み、当時でいうASPが注目を集め始めました。「これを使えばお客さまに直接価値を届けられるのではないか」と考え、IaaS前提のサービス作りをしていたのが「HDE One」のスタートです。 

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小椋社長 

しかし最初は、お客さまにASPのメリットをまったく理解していただけませんでした。当時のメディアにも「米国のクラウド事業者にデータを預けるとすべて取られる可能性がある」といった記事が載るくらいでしたから、警戒されるのも当然のことです。
しかも、私たちが提供していたメールアーカイブなどの仕組みには社内に置いておきたいデータが含まれているので、いくら性能や可用性が優れている、機能も自動でアップデートされるとアピールしても、お客さまにはなかなか刺さりませんでした。それどころか弊社内でも、興味を持つ人間がいませんでしたね。 

 

こうした状況が大きく変わったのは、2011年3月に発生した東日本大震災の後からでした。実際にオフィスへ出社しなければ仕事ができない状況をリスクと判断したり、データが1ヶ所に集まっている環境が危険だと認識されたりし始めてから、クラウドに対する企業の理解が高まったのです。そこから本格的にクラウドベースの事業化をスタートしました。
ちなみに「HDE One」は、私がコツコツと通勤中の電車内で作ったものです(笑) 

シェアNo.1!選ばれる秘訣はコンタクトポイントをいかに増やすかという発想

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里見

お客さまに受け入れていただけるまでは、まさに孤軍奮闘の状態だったのですね。その成果が実り、いまや「HENNGE One」はクラウド・セキュリティ分野で市場シェアNo.1を達成されています。
これだけのシェアを維持するには当然新規顧客の獲得だけでなく、解約を最小限に抑える取り組みも必要になってくると思いますが、この辺りになにか秘訣はありますか? 

 
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小椋社長 

愚直にお客さまの満足度を意識しているだけで、特に秘訣というものはないですね。ただ、企業としてカスタマーサクセスの機能を重視しているのは特徴のひとつかもしれません。カスタマーサクセスの専門部署がお客さまに対して常にコンタクトをとるようにしたり、最近ではユーザーコミュニティを作ってユーザー同士の交流を促したりと、弊社とのつながりをメリットに感じていただけるよう心掛けています。
また、社内のマーケティングイベントでも新規顧客だけを意識するのではなく、既存顧客が参考になるよう先進的な事例紹介などを盛り込むといった感じですね。 

 

サブスクリプションである以上は毎年お金を支払っていただいているわけですから、そこに価値を見出せるなにかがなければ解約のきっかけになり得ます。そこでお客さまに対しては、常に新しい情報や新しい切り口のコンタクトを心がけています。 

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里見

素晴らしい取り組みです。
弊社もそうですが、日本でサービスを提供している企業は代理店制度を用いているケースが多く、代理店経由の販売ではエンドユーザーとのコンタクトが意外に難しいといえます。
そうした部分で、パートナーに対する取り組みなどは行われていますか?

 
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小椋社長 

もともとお客さまに対する"届けづらさ"を課題としていたので、そこは今でも強く意識しています。世の中には手離れが良くなるようにお客さまとのコンタクトを減らす企業もありますが、弊社は真逆で、常に「お客さまとのコンタクトポイントを増やすにはどうしたら良いか」という発想で動いています。
もちろんすべてのお客さまに満遍なく接することは難しいのですが、それでもなるべく多くのお客さまへ直接リーチできるよう、パートナー様ともそうした関係を築こうと心掛けています。

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日本企業にとってはここからが本当の意味でのスタート

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里見

お客さまとのコンタクトポイントを増やすという施策だけでなく、社内のカルチャーも特徴的です。
2016年には社内の公用語を英語化され、英語が苦手な方を語学研修に行かせるといった取り組みも行われていますが、その意図や社内の反応についてお聞かせください。

 
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小椋社長 

当時は社内でも「なぜ英語にしなければいけないのか」といった抵抗は大きかったですね。ただ私自身、2010年頃からクラウド前提の開発を行っていく中で、最新の情報がすべて英語ベースで提供されており、リアルタイムに情報に追随しアップデートしていくことが大事だと感じていたので、少なくとも開発者は英語力を身につける必要があると思いました。そして開発者の英語力を重視するなら、人事や管理部門も英語ができなければいけませんから、結局全社的に公用語を英語化することにしたのです。

もちろん時間はかかりますが、世界に通用するIT企業を目指し、現在では皆さんかなり英語力が向上しています。 

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里見

常に先を見据えた取り組みを実践されていますね。
それでは最後に、これからの方針についてお聞かせください。

 
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小椋社長 

現在の日本では、SaaSを使った働き方改革がまだまだ進んでいない状況です。東日本大震災の時もそうでしたが、危機的状況が発生してからSaaSを無理やり使い出した企業が多く、業務への永続的な組み込みで生産性向上を図るところまで至っていません。むしろここからが本当の意味でのスタートなのです。
取り組みが一定のレベルを超えると加速して生産性が向上し、日本企業の課題である生産性の低さを克服できる未来が待っています。それが実現できるよう、お客さまがSaaSを使った働き方へ移行しようとした際に、障害となる石をすべて弊社が取り除いている状態にしたいですね。 

弊社ではまず比較的大きな障害になりやすいセキュリティに関して「HENNGE One」というひとつの回答をご用意しましたが、それ以外の障害も取り除くことで、お客さまがさまざまなサービスを活用し、働き方を大きく変える未来に貢献できたらと思います。

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里見

小椋社長の類まれなる発想力や行動力から、今後どのような新サービスが誕生していくのか楽しみです。
本日はありがとうございました。

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