ブルー・オーシャン戦略における市場創造とは?――BNPLのリーディングカンパニーが語る開発秘話

"先駆者に聞く"では、サブスクリプションモデルのビジネス(以下、サブスクビジネス)に携わる人に、サービスにおける運営の秘訣や大切にしていることなどを伺い、サブスクビジネスを成功させるヒントを掴むためのコンテンツをお届けします。

「つぎのアタリマエをつくる」をミッションに掲げる株式会社ネットプロテクションズ(以下ネットプロテクションズ)は、日本国内の後払い決済市場を牽引してきた「BNPL(Buy Now, Pay Later)」のリーディングカンパニーとして知られています。BtoC通販向け決済サービス「NP後払い」、BtoB向け決済サービス「NP掛け払い」など、実際にユーザーとなっている企業も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、ネットプロテクションズ 執行役員の秋山瞬氏に、「NP掛け払い」の成り立ちや特徴、サービスを提供する上で重視しているポイント、今後の展開などについて伺いました。

※本インタビューは2022年10月に実施されたものです。

ブレイクの鍵は商習慣が異なる業界ごとのチーム分け

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吉田

まずは秋山様のご経歴をお聞かせいただけますか?

 
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秋山氏

大学を卒業後、新卒でHR系のスタートアップ企業に入社しました。そこで約5年間勤務したのですが、当時の顧客だったのがネットプロテクションズです。そして2009年にネットプロテクションズへと転職し、今年で14年目になります。

入社当時の業務は人事でしたが、2013年に営業のマネジメントも手掛けるようになり、主要事業の「NP後払い」のセールスマネージャを経て、2017年にビジネスデベロップメントグループを立ち上げ、執行役員となり現在に至ります。

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吉田

今回メインでお話を伺う「NP掛け払い」ではどのような役割を担われているのでしょうか?

 
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秋山氏

現在の「BizDev(Business Development)」領域においては基本的にサービス横断で対応していますので、弊社のBNPL(Buy Now, Pay Later)サービス全般のアライアンス戦略を企画しながら、そのうちの1つとして「NP掛け払い」のアライアンス活動などにも携わってきました。

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吉田

「NP掛け払い」はいつ頃から立ち上げて、どのようなマーケットを対象にされていたのでしょうか?

 
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秋山氏

2011年に「NP企業間決済」という名称で立ち上げたサービスがもとになっています。BtoCが対象となるECの物販向けに提供しているサービスが「NP後払い」で、「NP企業間決済」はBtoBの通販分野をターゲットにスタートしました。

それから何度かリブランドを重ね、2017年に「NP掛け払い」となってから一気にブレイクしました。

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吉田

ターゲット市場の変化など、ブレイクのきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

 
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秋山氏

「NP掛け払い」がハマる業界はいくつかあるのですが、それまで中心としていたBtoB向けECのような業態以外にも、飲食や酒類などの卸事業者が小口取引先へ販売をする際や、ベンチャー企業における定額支払いの需要が見えてきてから、より大きく伸びましたね。
お客様のニーズや各業界の商習慣がまったく違うので、ひとつのマーケットから広げるというよりも、飲食系やベンチャー系などいくつかチームを分けた状態で推進してきました。

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請求関連の業務を丸投げできる「NP掛け払い」

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吉田

最近は「BNPL市場」というキーワードを多く目にするようになりましたが、現在の「NP掛け払い」のマーケット観についてお聞かせください。

 
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秋山氏

企業間取引の市場は、中小企業の支払手形・買掛金の総額より全体で180兆円ほどの規模です。その中で弊社サービスの対象となり得るのは決済手段が銀行振込・手形・現金となる取引で、だいたい市場全体の8割弱、140兆円がマーケットサイズとなります。「NP掛け払い」の年間取扱高は979億円ほどなので、そうした意味ではまだまだホワイトスペースが多く残っている感じですね。

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吉田

これだけ大きな市場の中において、御社が提供されている「NP掛け払い」の特徴や優位性についてお聞かせください。

 
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秋山氏

「NP掛け払い」の特徴は、単なる請求書発行業務のアウトソースだけではなく、新規顧客に対する与信審査やサービス提供後の入金確認および督促、加えて債権未回収時のリスク保証までセットにしている点にあります。受発注から請求書発行まで行うサービスや、債権保証ではファクタリングなども従来から存在するサービスですが、これらはあくまでも単体で切り分けたものでした。

しかし「NP掛け払い」なら、決済に関する業務を丸ごとセットでお任せいただけます。与信から債権未回収リスク保証まで任せられることで、新規取引に二の足を踏むこともなく、また決済業務をアウトソースすることで、お客様の経理や営業担当者がコアビジネスに注力できるようになるのもポイントです。

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吉田

御社がお客様へアプローチする際、サービス内容の理解度や反応はいかがですか?

 
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秋山氏

現時点では他社の類似サービスがないので、ご理解いただくのには時間がかかりますね。どうしても請求書発行業務のアウトソースやファクタリングなど既存サービスに寄せて捉えられてしまうため、弊社としてのベネフィットをなかなかご理解いただけないケースが多いです。

掛け売りなどは自社の経理担当者の業務、というのがこれまでのイメージでしたし、そこをアウトソースできること自体があまり知られていません。
そこでまずは認知向上を第一に考え、最近ではマスマーケティングなども積極的に採用しています。

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高めの与信通過率で顧客の機会損失を防ぐ

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吉田

御社サービスについてお伺いしたいのですが、NP掛け払いの与信の仕組みは独自に構築されているものなのでしょうか?

 
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秋山氏

BtoC向けのサービスと同様に、与信の仕組みは独自に構築しています。基本的に買い手企業にはまず一度使っていただきます。そして取引実績を見ながら弊社独自の与信アルゴリズムに組み込んでいきます。実際に与信の通過率は、実績ベースで99%程度とかなり高めです。

上限金額の設定はありますが、せっかくの受注が決済で弾かれてしまうと、お客様にとっても機会損失につながってしまうので、通過率を高めに設定しているわけです。

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吉田

与信というと、一般的に決算書や登記書類など多くの情報が必要になるイメージですが、御社の場合はいかがですか?

 
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秋山氏

弊社の場合は屋号や住所など、少ない情報で与信ができます。買い手企業からもらう情報が少なくて済みますし、従来のように書類調達に手間をかけた挙句に長時間待たされるようなこともなく、Web上で完結できるのもメリットです。
これからサブスクで伸ばそうという企業にとっても使いやすいと思います。

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吉田

導入されるお客様はどのような業界が多いのでしょうか?

 
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秋山氏

少額で大量の取引先を有しているような業界と相性が良いですね。1000万円でも1万円でも請求書としては1通なので、件数が増えればそれだけ工数がかかってしまいます。
そこを切り分けて丸ごとお任せいただければ、請求業務自体の手間が減りますし、入金確認や督促・回収の手間なども一切気にする必要がありません。

また、大規模な調達やプロモーションによってこれから一気にトランザクションを伸ばそうと考えている企業では、請求などバックオフィス業務を支える人的リソースが追いつかないこともあります。そうした際にも便利にお使いいただいております。

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サブスクではChurn(解約)の管理や顧客フォローが重要

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吉田

御社のお客様でサブスク事業者に共通した課題があればお聞かせいただけますか?

 
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秋山氏

サブスク提供企業の重要なKPIにはいくつかありますが、その中でもChurn(解約)に関する部分はかなり気にされていると思います。解約を防ぐには、やはり顧客フォローを重視した戦略が必要不可欠です。
そうした意味でも、決済関連の業務をアウトソースしていただければ、顧客フォローに人的リソースを集中できるようになります。

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吉田

御社もサブスク事業者になりますが、顧客のChurnを管理されていたりしますか?

 
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秋山氏

そうですね。弊社は従量での変化もありますが、基本的には継続利用していただくタイプのサービスなので、Churnの管理や顧客フォローは大切にしています。

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吉田

お客様のビジネスを成功へと導くために、重視されているポイントはありますか?

 
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秋山氏

UI/UX的な部分はもちろんのこと、ある意味でパッケージというか汎用的なサービスでありながらも、できるだけお客様のニーズに応じて柔軟に対応できるよう心掛けています。

たとえば請求の締め日や支払日を買い手企業ごとに変更できたり、弊社からお客様へ立て替えてお支払いするサイトもいくつかのパターンをご用意したり、といった感じですね。もちろんインフラサービスなので、必要以上に細かく機能を変えていくのではなく、現場での混乱を招かない程度にインボイス対応等、行政や政治的な流れに応じた改修を行っています。

ただし市場が広すぎるため、1つの業界で使える機能が他の業界でも使えるかというと、そうでもないんです。そこで、いかに汎用性のあるプロダクトを作っていけるかが重要といえます。
大幅アップデートは年間1~2回程度で、お客様のニーズを吸い上げてブラッシュアップしながら、柔軟性を意識してプロダクトづくりを進めています。

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パートナー戦略の強化でWin-Winの関係を築く

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吉田

2021年12月に親会社のネットプロテクションズホールディングスが東京証券取引所市場第一部へ上場されましたが、上場による影響や今後の戦略についてお聞かせください。

 
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秋山氏

上場によって認知度が確実に上がっており、アライアンス戦略も立てやすくなっています。これまでBtoCのプロダクトは、代理店をはじめ100社以上のアライアンスパートナーと連携しながら取り扱いを伸ばしてきたのに対して、BtoBやそれ以外のプロダクトはまだまだパートナー戦略を推進しきれていなかったので、今後はさらに強化していきたいですね。

BtoBの場合、業界によってアライアンスを組むパートナーが変わってきます。パートナーによっては対象とする顧客が重なってくることもあるため、相互アプローチによるメリットを考慮しながら、Win-Winの関係が築ければと思います。

また、上場によって認知度が上がったとはいえ、まだ十分とはいえないため、業界ごとのプロモーションにも注力していく予定です。

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吉田

本日はありがとうございました。

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