前編|変化する組織がサブスクビジネスを成功に導く
〜ARR100億円に到達した注目企業のカスタマーサクセス〜

「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。 」をミッション※に掲げ、テクノロジーと創意工夫で「働きやすさ」と「働きがい」の創出を目指す株式会社SmartHR(以下SmartHR)は、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を運営。
多くのデータを安全に扱う環境を提供しつつ、人事に関わる複雑な業務のDX化を実現しています。
※ミッションについてはこちらも参照ください。

SaaS企業の中では未上場でARR100億円超えを達成したことでも注目を集めるSmartHR。新たな機能の追加や顧客の要望に応えた機能改修を重ねながらも、高品質なカスタマーサクセスを実現しています。そこで今回は、SmartHR 執行役員の稲船祐介氏に、事業スピードに対応するカスタマーサクセスを実現するための組織づくりや運営について伺いました。

やるべきことはお客様の目標達成のためのプロセス構築とその実現

吉田

まずは稲船様のご経歴をお聞かせください。

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稲船

大学を卒業後、中小企業規模のお客様向けに給与計算や営業管理などの業務アプリケーションを提供するソフトウェア開発会社に入社し、未経験からプログラムを書く仕事からスタートしました。その会社で6~7年ぐらいプログラマーとして従事した後、Web系の制作・開発会社に転職しました。企業のWebサイトやWebアプリケーション、スマートフォンアプリなどのディレクション業務を7~8年ほど経験。次の転職で初めてWebサービスを展開する事業会社に入り、Webメディアの運営Webマーケティングなどを担当しました。

そこでWebマーケティングのノウハウを生かしたプロダクトを作ることになり、開発の初期からメンバーとしてジョイン、開発から営業などをそれまでの経験を活かして手掛けていたのですが、だんだんお客様が増えてきて。そうなると当然ユーザーサポートが必要になるということで専門チームを立ち上げたんです。そのチームを立ち上げていく過程の中で、カスタマーサクセスという概念という考え方があるということを知りました。これがカスタマーサクセスに関わるキャリアのはじまりです。

吉田

どのような経緯でSmartHR社に入社されたのでしょうか?

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稲船

もともと SmartHRという製品がローンチされた時に、「こんな風に世の中を変えるサービスがあるんだな」と。すごくいいサービスだと関心を持っていました。「こういうサービスが発展するといいな」と思っていました。さらに、私自身がカスタマーサクセスに取り組むことになった時に、「カスタマーサクセスってどうやるんだろう」と調べるとSmartHRが情報発信していて。発信情報を見たりイベント参加しているうちにコミュニティに参加するようになりました。そこでご縁がつながったという感じですね。ジョインして4年半ほどになります。

吉田

SmartHR社で稲船様はどのようなミッションを持たれているのでしょうか?

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稲船

私たちのやるべきことは、「SmartHRというサービスを使うことにより、お客様自身が目指すゴールを達成する」という状態を、いかに持続させるかということです。そのために、カスタマーサクセスは深くお客様を理解し、お客様の目標達成のためのプロセスを構築して実現していく。そうすることにより、最終的には長く継続的にご利用いただくことにつながり、新たな機能の開発やサービス向上への投資が可能になる。これによって、お客様により質の良いサービスをどんどん提供できるようにする。そういった全体的な概念や考え方を部門に浸透させながら、質の高いカスタマーサクセスの実現を目指しています。

吉田

カスタマーサクセスチームの組織構成をお教えください。

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稲船

カスタマーサクセス部門に所属する人は約120人(2023年4月現在)になります。組織構成は2つのチームから成っていて、1つはお客様を直接担当するカスタマーサクセスマネージャーという職種のチームです。このチームはお客様の規模ごとに3つに分かれています。東京、関西、東海、九州の各支社にもカスタマーサービスマネージャーが在籍しています。

もうひとつは、カスタマーサクセスマネージャーの活動支援を行うチームです。オペレーション構築や機能のキャッチアップをしやすくするプロセスづくり、イネーブルメントといわれるような新入社員を含めた社員育成、あとはデータ分析を行うデータアナリストも在籍しています。SmartHRでは、人事労務の機能に次いで人事評価や従業員サービスといったような組織人事・タレントマネジメントに関わるプロダクトリリースしていますが、こうしたサービスには労務とは別の知識を必要とするので、ここを専門に担当しているメンバーもいます。

SmartHR_体制図.png

吉田

非常に規模の大きなチームですね。カスタマーサクセスとカスタマーサポートは違うのでしょうか?

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稲船

弊社では、カスタマーサポートとカスタマーサクセスとは違う組織として存在しています。カスタマーサポートはSmartHRの使い方に関するお問い合わせに対応し、カスタマーサクセスはSmartHRの効果的な使い方をお客様の既存の業務プロセスなども踏まえてご提案しています。スタイルも違っていて、カスタマーサポートはお客様からのお問い合わせにチャットサポート形式で対応し、カスタマーサクセスはこちらからコミュニケーションして、オンライン・オンサイトで顔を合わせて会話させていただくという形です。

数値の裏にあるお客様への深い理解が生むプロセスにも注目する

吉田

稲船様が考えるサブスクビジネスを成功させるためのカスタマーサクセスのあり方をお聞かせください。

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稲船

カスタマーサクセスやサポート、セールスといったお客様と接点があるポジションでは、お客様対応を通じて当然たくさんのご意見をいただきます。いただいたご意見、つまりお客様の課題やニーズをプロダクトにきちんと反映させてこそ、提供価値の最大化と事業貢献を両立すると考えています。ここに関しては、カスタマーサクセスはもちろんのこと、開発部門との連携や効率的に反映していく仕組みづくりなど全社的にも取り組んでいます。

また、導入プロセスや設定などは企業規模によってある程度共通しています。そのため、お客様の規模に合わせてサービスを構築することは大事ですね。例えば、企業規模の大きなお客様であれば導入自体に1年くらいかかることも多いので、複数人でチームを組み導入から運用までをプロジェクト化するなどしています。また、組織が小~中規模のお客様には導入プロセスをウェビナーでご覧いただく機会を作るなど、スムーズに導入していただけるようなプロセスを組んだりしています。同じカスタマーサクセスですが、お客様の規模によってもアプローチが変わってくるわけです。

吉田

カスタマーサクセスチームやメンバーは、どういったところが評価指標になっていますか?

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稲船

現在はChurn Rate(解約率)やExpansion(顧客の利用拡大)を大きな目標として置いています。実は、カスタマーサクセスチームで定量の目標を持ったのは今年からで、以前はプロセス作成などに評価ポイントを置いていました。ある程度組織も大きくなりプロセスも固まってきたので、そのプロセスを使って実際にどう定量的な成果を出していくかというところにやっとシフトしてきたという感じですね。

とは言え、こうした数値はすぐに成果が出るものではありません。その手前にある活動やお客様との関係構築、そういったことの積み重ねで結果が出てくるものです。最終的な数字での評価を持ちつつ、プロセスもしっかり見るということは引き続き意識しています。

後編はこちら

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この記事のライター
吉田 順一
吉田 順一

株式会社オプロ セールスコンサルティング本部 本部長
サーバ・ネットワーク構築の会社を経営していた時代にビジネスモデルをシステム構築からサブスクモデル (クラウド)へ事業転換。
現在はサブスクリブション型ビジネスの事業開発及セールス部門の責任者をしています。

この記事のライター
吉田 順一
吉田 順一

株式会社オプロ セールスコンサルティング本部 本部長
サーバ・ネットワーク構築の会社を経営していた時代にビジネスモデルをシステム構築からサブスクモデル (クラウド)へ事業転換。
現在はサブスクリブション型ビジネスの事業開発及セールス部門の責任者をしています。

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