2023年06月16日 公開
後編|変化する組織がサブスクビジネスを成功に導く
〜ARR100億円に到達した注目企業のカスタマーサクセス〜
多くのデータを安全に扱う環境を提供しつつ、人事に関わる複雑な業務のDX化を実現しています。
※ミッションについてはこちらも参照ください。
SaaS企業の中では未上場でARR100億円超えを達成したことでも注目を集めるSmartHR。新たな機能の追加や顧客の要望に応えた機能改修を重ねながらも、高品質なカスタマーサクセスを実現しています。そこで今回は、SmartHR 執行役員の稲船祐介氏に、事業スピードに対応するカスタマーサクセスを実現するための組織づくりや運営について伺いました。
今回はインタビュー記事の後編となります。前編をまだお読みになっていない方は、先にこちらをご覧ください。
「どんな価値をお客様に提供していくのか」をプロダクトに反映する
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吉田
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カスタマーサクセスチームではお客様と直接コミュニケーションを取られる機会が多いかと思いますが、どの様なご要望やお声が多いのでしょうか?
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稲船氏
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やはりお客様から多いのは機能に対するご要望です。自分たちの運用に合わせてこういう機能が欲しいというものが多いでしょうか。あとは、規模の大きなお客様からはサービスのパフォーマンスに対するリクエストも非常に多いですね。従業員の数が多く大量のデータを扱うので、そのパフォーマンスが注視されていたりします。
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吉田
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御社のサービスは想像を絶するスピードで機能アップデートがなされていますが、お客様のお声をどの様に開発チームにフィードバックされているのでしょうか?
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稲船氏
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弊社の場合、お客様の要望をプロダクトの開発に反映するプロセスが、大きく分けて3つあります。1つはお客様と接する中で会話に出てくる要望などを、それらを管理しているツールに投稿する方法です。蓄積されていく要望を開発側が日々ウォッチして、簡単に直せそうなものはすぐに着手し、予定しているリリースに含めそうなものはそれに合わせて対応するなどしていきます。細かいサイクルで小さな改修などを管理するのがこのプロセスです。
もうひとつは、開発側が持つ「こういう機能があったら便利なんじゃないか」とか「こういう価値を提供していきたい」といったものを実装する際に、カスタマーサクセスと一緒にお客様のご意見を取り入れていく方法です。課題としていることがお客様の現場ではどうなっているのか、それを解決するためにはどういう仕様にしたらよいのかなどをまとめていく形です。
3つ目として、お客様の要望やプロダクト側として作っていきたいと思っているものを総合的に判断する機会を持っています。ロードマップを元に、そこに記載されている内容の優先度や重要度を決めるということを四半期に一度くらいのペースで実施しています。営業やカスタマーサクセス、開発などの各部門の認識している重要度を客観的に判断して、会社としてSmartHRのあるべき姿をきちんと定義していく取り組みですね。大きく分けてこの3つのプロセスで決めています。
自ら変化する柔軟な組織が質の高いカスタマーサクセスを生む
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吉田
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SmartHR社のカスタマーサクセスは事業成長に大きく貢献していると思いますが、何が成功の大きな要素になっているのでしょうか?
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稲船氏
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個人的にはまだまだその過程の段階であると思っていますが、お客様の数も増えている上に組織も大きくなって事業の収益も伸びているということを考えれば、客観的にはうまく対応することができた部分もあったのだと思います。その要因をひとつ挙げるなら、変化への対応が早い組織であることだと思います。製品のアップデートとお客様の増加スピードに応えるべく、カスタマーサクセスは体制も含めて常に変化を求められます。弊社のカスタマーサクセスチームは、発足から現在に至るまでずっと変わり続けています。先ほどご紹介したような役割でたくさんのチームがありますが、この状態になったのは今年の1月から。去年は違う体制でしたし、その前もまた違うんですね。規模が大きくなってもこういった自分たちで変化を起こしながら変わり続けている点は、うまくいっているポイントなのかなと思いますね。
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吉田
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特に流れの早いSaaSの世界でそこに合わせて変化するというのは並大抵のことではないと思います。実現できる秘訣はなんでしょう?
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稲船氏
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「私たちは変わらなければいけない組織だ」というメッセージを常に伝えています。特に採用の段階や入社された最初の時にも、「私たちは変わるチームです」と伝えています。今のメンバーは実際本当に変化していることを体感しているので、変わることが前提である考え方を持っています。この意識を持ってくれているメンバーの力がすごいなと思いますね。自分の経験からも感じますが、変化するって大変ですよね。やらなければならないことが多いし、お客様も「え、変わるの?」と思われますよね。できる限り変えたくないっていう方が普通だと思いますが、それをあえて自ら変えていくっていうことをしっかりメンバーのみなさんが理解してくれている点は、支えられているなと思いますね。
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吉田
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逆にご苦労されたエピソードがありましたらお聞かせください。
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稲船氏
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苦労している点といえば、成功のポイントとして挙げた「変化し続けること」でしょうか。カスタマーサクセスって、どうやったらうまくいくのかというお手本がない世界ですよね。自分たちがお客様に向きあって生み出すしかないので。果たして自分たちがやっている事が正解なのかわからない中で、それをやり続けていくっていうのは結構大変ですね。怖さもあります。 あとは、ものすごいスピードで機能がどんどんアップデートされていく、お客様がどんどん増えていくと、人ひとりの処理できる業務量を簡単に超えてしまいます。プロダクトはリリースしたらたくさんのお客様に使っていただいてスケールできるものですけれど、人間の処理量は飛躍的にスケールすることは難しい。でも、覚えなきゃいけない機能の量とかも膨大にあるんですよね。つまり、カスタマーサクセスには困難な要素が非常に多いわけです。それを仕組みでどう解決するかとか、組織がパフォーマンスを出すためにいかに組織や個人が健康的な状態を作り出せるかということをマネージするように意識しています。
生き生きと働く個人が企業を成長に導く
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吉田
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SmartHR社はクラウド人事・労務サービスの先駆けとしてどのように文化を築いてきたのでしょうか?
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稲船氏
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弊社は人事労務を起点にして、現在は組織人事やタレントマネジメント という領域に関わるプロダクトも手掛けています。私たちが一貫して持つ想いは、「企業そしてその中で働く従業員様がいかにそのパフォーマンスを発揮し、その人らしく働けるか」ということです。それを実現するために私たちが送り出せるプロダクトやサービスは今後も積極的に展開していきますし、それ以外の領域でも私たちがやるべきところが出てくれば必ず手掛けていきたいと思っています。そして、ますますカスタマーサクセスの役割は重要なものになると思いますので、求められるサービスを提供できる組織であり続けるよう尽力していきます。
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吉田
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クラウド人事・労務サービスにおいて、稲船様が考えられる今後のトレンドをお聞かせください。
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稲船氏
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SmartHRは、企業の従業員様のデータが集まってくるサービスです。データをいかにタレントマネジメントに活用していくか、様々な業務や事業に人事データというものを活かせる状態にできるかがポイントです。そのための機能やテクノロジーを積極的に取り入れ、お客様に提供していかなければいけないと思っています。トレンドで言えばAIなどはタレントマネジメントの領域においてもすでに使い始めていると思いますが、その源泉にあるものはやはり蓄積されたデータです。私たちは、お客様が安全にデータを蓄積でき、さらに安全に使えるという環境を提供することでご支援していきたいと思っています。
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吉田
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カスタマーサクセスの重要性と御社のお取り組みが大変勉強になりました。本日はありがとうございました。
サブスクビジネスにおける10のKPI ー KPI設定と進捗確認における盲点
サブスクビジネスの成功の鍵は、正確なKPIの理解とその活用にあります。
本稿では、各KPIの用語解説をはじめ、各KPIの計算式など詳しく解説します。 サブスクビジネスの成長を加速させるために、KPIの活用方法を学びましょう。