2021年10月29日 公開
【トップ対談】業界シェアNo.1の電子契約サービス「クラウドサイン」継続利用の秘策
今日の先駆者:弁護士ドットコム株式会社 代表取締役社長 内田 陽介 氏
聞き手: 株式会社オプロ 代表取締役社長 里見 一典
人々と専門家をつなぐポータルサイトの「弁護士ドットコム」「税理士ドットコム」などを提供している弁護士ドットコム株式会社(以下、弁護士ドットコム)。同社は、契約締結から契約書管理まで可能な業界シェアNo.1のクラウド型電子契約サービス「クラウドサイン」を提供しビジネスを拡大しています。弁護士ドットコムの代表取締役社長として、急成長する同社のビジネスをリードする内田陽介氏に、クラウドサインビジネスを成長させる方法、さらには急成長するビジネスをリードする際の面白さや苦労について、株式会社オプロ(以下、オプロ)代表取締役社長の里見がお話を伺いました。
※本インタビューは2021年9月に実施されたものです。
半年で三菱商事を退社しベンチャーの世界へ
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里見
- 日頃は御社のクラウドサインと連携したソリューション展開をさせていただき、誠にありがとうございます。オプロにとってNo.1の電子契約サービスであるクラウドサインと一緒にビジネスができることは、本当にありがたいことです。今日は急成長しているクラウドサインのビジネス展開や、その上での面白さ、難しさをお伺いできればと思っております。最後に、将来の計画も含めお話を聞かせください。 それでは早速ですが内田社長のご経歴をお聞かせいただけますか?
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内田社長
- 弁護士ドットコムの代表取締役社長に就任して4年が経過し、5年目に入ったところです。
私は2000年に新卒として三菱商事株式会社に入社しましたが、半年で退社してしまいました。その後入社したのが、独立系ベンチャーキャピタルの株式会社アイシーピーです。そこから20年以上ベンチャーの世界を経験してきました。
ここでの最初のミッションは、投資先の株式会社カカクコムに出向して上場を目指すことでした。
カカクコムは価格.comという商品比較サイトを運営しています。現在では様々なジャンルの商品やサービスが掲載されていますが、当時はPCの価格比較情報だけを提供していました。それだけではいずれ会社の成長が止まってしまう懸念もあるため、新たな事業を創ることが私のミッションでした。
幸いカカクコムの事業は大きく伸び、上場を果たします。その頃はベンチャーキャピタルからの出向という立場ながらもカカクコムで本部長を務めていたこともあり、上場のタイミングでカカクコムに転籍しました。
カカクコムには13年ほど在籍し、価格.comの責任者を務めながら取締役として経営にも携わりました。
その後、2013年に独立し、Webサイト制作や企業のコンサルティングをしていました。その中で「みんなのウエディング」という結婚式場の比較サイトの企業をコンサルティングしていたご縁もあり、その会社の社長を引き受けることになります。後にこの会社は、クックパッドのTOBを受けて子会社となったのですが、それまでの1年間ほど社長を務めました。
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内田社長
- 弁護士ドットコムの創業社長である元榮とはカカクコム時代から個人的なつながりがあり、以前より弁護士ドットコムの社外取締役になって欲しいとオファーをもらっていたのですが、みんなのウエディングでの社長業に区切りがついたこともあり、弁護士ドットコムの社外取締役に就任しました。その後、元榮が国会議員になったこともあり、元榮から社長就任のオファーをもらうことになります。
カカクコム時代から、ユーザーが納得のいく意思決定をできるサービスを創ることに強く魅力を感じており、いつしかそのようなサービス作りが自分のライフワークのように考えていました。
そういう意味でも弁護士ドットコムは、人生を左右するような難局を乗り越える時に頼りとなる弁護士に比較検討して出会うことができる極めて社会的意義が高い事業であり、「専門家をもっと身近に」という経営理念にも強く共感していたため、是非やりたいと思い社長を引き継ぎました。
さらに、当時はまだ認知も普及もされていなかった電子契約サービス(クラウドサイン)を始めたところでしたが、これはいつか非常に大きな事業になると感じていたため、クラウドサインの育成にも強い魅力を感じていました。
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里見
- まさしく弁護士ドットコムの社長になるための経験を積まれてきたのが、内田社長だと思いました。このお話を間近に伺うことができ、ちょっと感動しております!ところで2000年頃は、就職氷河期だったと思います。そこで三菱商事に入れるのは大変なことだと思うのですが、半年で退社されたのはどういったひらめきがあったのでしょうか?
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内田社長
- 学生時代から『龍馬がゆく』や『不毛地帯』などの本を読んで、商社の仕事ってかっこいいな、ビジネスを創ることは面白そうだなと単純な憧れを抱いていました。その思いを胸に商社に就職したのですが、当然ながら三菱商事は超巨大企業であり、大きな組織の中で社会人1年目の私がすぐにビジネス貢献できる実力があるわけもなく、仕事に没頭しきれない漠然とした時間を過ごしていました。
一方同じようなタイミングで、インターネット関連のベンチャー企業が集中していたビットバレーが盛り上がっていました。自分と同じような世代の人たちが、起業したりベンチャー企業で働く姿を見て、自分の中にベンチャー熱が湧き上がりました。三菱商事の同期達と、始業前の朝6時に集まり、ビジネスアイデアを出し合っては何かやれないかと議論を繰り返したりしていましたが、何もビジネス経験がなく技術もコネもない自分達には実行に足るアイデアは出せませんでした。
それならば、いっそベンチャーの世界に飛び込んでみようと考えるようになりました。その中で、どうやらベンチャーキャピタルというベンチャー企業を専門とした投資会社があると知り、ベンチャーキャピタルに入れば、日本中の素晴らしいベンチャー企業に出会えるのでは、と考えました。
そこで「興味があるので一度話を聞かせて欲しい」と日本中のベンチャーキャピタルにメールを出し、その中で2社だけが、入りたいなら入っても良いとの連絡をくださり、うち1社がアイシーピーでした。
スピーディーなビジネスの成長、継続した成長を維持する経営のプレッシャーも経験
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里見
- 当時から大胆な行動力を持っていたのですね。そこからカカクコムに出向され、十数年を一気に駆け抜ける。もの凄いスピードで成長する中にいらしたわけですが、当時の苦労や逆にやっていて楽しかったことなどを教えていただけますか?
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内田社長
- カカクコムに入った当初は従業員が5名程度で、比較サイトの利用数は伸びているものの会社は認知もされていない状況でした。
ちょうど通販型の自動車保険が新たに出始めた頃で、品物の価格比較ができるならサービスの比較をやってもおかしくないと考え、自動車保険を一括で比較するサービスを作ろうと動き始めます。とはいえ保険の知識がなく、インターネットのことも実はよく分かっていませんでした。
社会人1年目の自分としてはがむしゃらにやるしかありませんでした。保険もインターネットもひたすら学び、顧客の元にも何度も足を運び、ようやくサービスを創り上げ公開に漕ぎ着けます。 管理画面を見ていてファーストユーザーが使ってくれた瞬間に画面に「1」と表示された時には「これがインターネットか!」と感激しました。
自分たちが創ったサービスを、世界中にいる会ったこともない人が使ってくれる。 そこから1が5になり、10になり100になりどんどん増え、サービスを伸ばす喜びを大きく感じました。
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内田社長
- 初期はこのように新規事業を次々と創ることがミッションで、様々な会社に門前払いを受けながらもコネクションを作り、新しいサービスをひたすら生み出すことの繰り返しでした。
その後、価格.com事業の責任者になりました。大好きな価格.comを育成する喜びと充実感が大きかった一方、上場企業となったカカクコム社において、当時は価格.com事業の売り上げが全社売上の大半であったこともあり、高い成長を続けねばならないプレッシャーとも日々闘っていました。この経験は楽しいという一言では語れませんが、非常に充実した時間でした。
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里見
- スタートアップでがむしゃらになる時期と、経営層になり伸ばし続けると言う2つを見事に経験され、今があるのですね。その後、クラウドサインのビジネスがスタートしたタイミングで弁護士ドットコムの社長に着任されるわけですが、現在ではシェアNo.1で弁護士ドットコムの売上の40%を占めています。事業開始後6年で売上比率40%は、かなりの成長エンジンになっていますよね。
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内田社長
- 今まで価格.comや食べログのような世の中を大きく変える、新しい文化を作るサービスに出会い関わりましたが、クラウドサイン事業にもそのような大きなポテンシャルがあり、社会の新しい常識になるサービスだという思いがあります。
まだまだ発展途上であり成長は始まったばかり。改めて凄い事業に携わらせてもらっているなと感じています。
この事業は元榮を始めとした当時の経営層と担当してくれたチームメンバーが創ったものですが、当時の意思決定は本当に素晴らしいと思います。
また、クラウドサインに関わった全メンバーの情熱的な日々のおかげで事業成長が継続できています。
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里見
- 内田社長の成功スピードの経験が活きているのでしょうね。
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内田社長
- こういった新しい事業を成長させる際のスピードや、先行投資のあり方をカカクコム時代に経験できたことは貴重な経験でした。
カカクコム時代に食べログ事業を成長させることができたのは、価格.com事業を地道に育て、やがて大きな利益を生むようになり、それにより新しい事業をしっかり育てられたからです。
弁護士ドットコムも同様で、弁護士ドットコム事業がしっかりと社会に根を張り、売上を作り利益をもたらしているので、クラウドサイン事業に安心して投資できます。成長を続けられるプロセスや環境を整えることが重要です。
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里見
- まさしくそれは、マネジメントの成果でもありますね。
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内田社長
- 創業者の元榮はイノベーションをどんどん生み出す人物で、将来への志と大きなビジョンのもと、長い道のりへの成長へ投資を惜しまないタイプです。そのような環境の中だったからこそだと思っています。
クラウドサインを企業に使い続けてもらうためにカスタマーサクセスを重視
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里見
- ところで、価格.comや弁護士ドットコムもBtoCのサービスですが、クラウドサインはBtoBのサービスになります。法人サービスの難しさは、顧客企業に使い続けていただくリカーリングだと思いますが、そのための秘策は何かございますか。
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内田社長
- BtoCもBtoBも根っこは同じだと考えています。
ユーザーにどれだけ満足していただけるかという観点で、まずユーザー本位のサービスをしっかり創り、それを導入いただくことが全ての始まりです。そこから使い続けていただき、さらに継続して使っていただく。
そのため、クラウドサイン事業を立ち上げてすぐにカスタマーサクセスチームを作り、導入いただいた顧客にいかにスムースに使っていただき、お客様の事業が成功するようフォローする活動を重要視しています。
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里見
- カスタマーサクセス、これはとても大事なキーワードですね。 最後に今後のことですが、来年早々には改正電子帳票保存法も施行され御社には良い風が吹いています。この辺りを含め、御社のビジネスモデルでこれからはどのように対応していくのでしょうか?
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内田社長
- クラウドサインは、日本で生まれた日本初のクラウド型電子契約サービスです。
そして創業者も弁護士、事業責任者も弁護士であり、日本の法制度にしっかり寄り添い事業を創ってきました。日本の商慣習に対応することで、日本企業にクラウドサインを使っていただき、事業を成功に導くことに尽力してきました。
電子帳票保存法にも、今のクラウドサインをご利用いただければ問題なく対応できます。この点にはこれからも徹底して取り組んでまいります。
今後はDXが進み、関連する法改正も進むでしょう。例えば昨年は電子署名法の法解釈の変更もあり、これも日本企業がDXを推進する上で極めて大きなインパクトがあるものでした。
我々サービス事業者はこれを後押しして、企業だけでなく行政も含めた新しい社会がよりスピードを速めていけるようご支援します。
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里見
- お話をお聞きしていて、ますます御社の魅力を感じました。引き続きお付き合いをよろしくお願いします。本日はありがとうございました。
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